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    <天網恢恢祖にして洩らさず>
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      オジョー、6歳の誕生日、一週間前の出来事。
      夜8時過ぎ、父子3人(現在、下の子は1歳8ヶ月になりました)で買い物から帰ってきたと思ったら、 オジョーが玄関先で1人バタバタと喚き泣きしていた。

       母、訳がわからず、父にそっと事情を聞くと、万引き未遂をしたとのこと。

       ポケットにお菓子を入れたところを目撃した父は、できればオジョー本人の口から、「コレ、買って?」なりの言葉がでるのを待っていたという。しかし、レジの前にきても、その様子がないため、「ポケットの中身だして」と。そして、心待ちにしていた来週の誕生パーティも、プレゼントの自転車も無し!!と怒って、今の状況に至ると。 

      父が怒ったのだから、ここは懐柔役に回るのが母の役目か。

       寝室で父がアカ(次女)を寝かせつけている間も、オジョーの喚き泣きは止まらず、とりあえず、

      「泣いていたら、お話できないから、オジョーが泣きやんで、お話できるようになったら、呼んで」

      と、1人になる時間を与えた。 
       しばらくして、泣きやんだオジョーがやってきた。

       「ママ、お話できる」

       それでは、リビングでゆっくり話を聞こうと、部屋の灯りを暗くして(そのほうが落ち着いて話せるのではとの考え)、ソファに座り、オジョーを膝の上に抱いた。

       「ねぇ、オジョー?ママは、オジョーのこと、これからも信じたいから、まずママと約束してくれる?どんなに言いにくいことでも、ちゃんとウソつかずにお話できるかな?オジョーと話したことは、誰にもママは言わないから」

       と、まずは指きりげんまんからスタート。

       「どうしてあんな泣いてたん?ママ、びっくりしたで。何があったん?」 

      「パパが、もう誕生パーティも自転車もナシやて言うた。」 

      「そう。なんで、パパ、そんなこと言うたん?」

       「・・・オジョーが・・・お菓子・・・ポケット入れた・・・」

       「そっかぁ。なぁ、オジョー、お店のお菓子とか人の物とか、勝手に取るのって、いいことかな?悪いことかな?」

       「わるいこと。」 

       「そやな、悪いことやな。ソレ、知ってて、なんでポケットいれちゃったん?」

       「・・・つい、いれちゃった。」

       「そっかぁ、つい、かぁ。なぁ、オジョー。今までにも、こっそりポケットに入れたりしてお店でたことはある?」

       「ない。」

       「そんじゃぁ、今回が初めてやったんやね。ママは、パパに買ってって言うこともできたと思うけど?どうして言わへんかったん?」

       「バザーでいっぱいお菓子とかジュースとか飲んだりしたから、パパがもうお菓子は買わへん言うた・・・。」

       その日は、保育園の夏バザーの日。 売り上げが園の運営費にもなり、我が家でも、この日ばかりは、好きなものを好きなだけ食べさせている。

       「そやな、今日、バザーでいーっぱいお菓子とか食べたから、そらもう今日はお菓子買わんで!ってなるよなぁ。ママでもたぶん、そう言うと思うわ。あんな、オジョー。パパな、オジョーがポケットにお菓子入れるとこ、見てたんやって。」 

       そこで、オジョーの表情が、え!?と一瞬驚いた顔になった。

       「でもな、パパは、オジョーがちゃんと自分から言ってきてくれるか、ちゃんとお菓子を元の場所に戻すかしてくれたらいいなって思って、黙って様子を見てたんだって。でも、オジョー、レジの前まできても、お菓子出さへんやったやろ?そのままお店でたら、オジョーはどうなる?」

       「泥棒さんになる。」

       「そやな、泥棒さんになるよな。どんなに、いいな、アレ欲しいなって思っても、勝手にお店の物とか、人の物とったら泥棒さんやんな?」

       「うん。」 

      「オジョー、ちゃんとわかってるやん。ママもパパも、オジョーを泥棒さんにはしたくないなぁ。あんな、オジョー。泥棒さんも、最初から泥棒さん、ちゃうねんて。最初はみんな、“つい”から始まるねん。それで、うまくいって、またやっちゃって。それがどんどん積み重なって、警察さんに捕まるんやて。」

       無言でじっと聞き入るオジョー。 

      「なぁ、オジョー?だーれにも見つからんでも、誰か1人だけは絶対知ってる人、おるよな?誰やろ?」

       「じぶん・・・。」

       「そうやぁ、自分や。誰にも見つからへんくても、自分だけは知ってるもんな。悪いことしても、自分だけは知ってる、やから、絶対逃げられへんねん。ずっと、心にイヤーな罰の悪い気持ちが残るねん。いつバレるかなぁ、バレたらどうしようって、ずっとビクビクしとかなあかんくなんで。それって、いい気持ちやろか?」

       「良い気持ちちゃう。ちょっと、なんか、イヤな気持ち。」

       「そやろ?ママもそんなんイヤやなぁ。ところでさ、オジョー。これからも、もしかしたら、また“つい”やっちゃうかもな、って思ったりする?」

       「・・・うん。」

       「そっかぁ、また“つい”やっちゃうかもしれんなって思うんや〜。それは困ったなぁ。どうしたら、“つい”やっちゃう気持ちバイバイできるやろ?」 

       しばらく考えた後、

       「お店の人に、ごめんなさい言う。」

       「うん、それいい考えやね。ちゃんと、お店の人に、『もうしません、ごめんなさい』って言えたら、“ついやっちゃうかも”って気持ちも無くなるかもしれんね。どうする?オジョー。今から、お店の人に謝りに行く?」 

       それから、しばらく沈黙が続いた。

       「なぁ、オジョー。自分の非、非ってのはな、悪いことしたなってことやけどな、自分の非を認めるってことは、とっても勇気がいることやぁ〜。まして、お店の人に謝りに行くなんて、もっともっと勇気がいるよな。でも、その勇気を出すことが大切やねんで。その勇気が、きっと、これからの“ついやっちゃうかも”って弱い気持ちをやっつけてくれると思うよ?頑張ろ?勇気だそ!」

       母は、膝の上に座り、黙りこくっているオジョーの手を握った。

       「あんな、ママな、お店とか人が多いところとか、苦手やん?発作起こすかも・・って、不安もあるわ。でも、オジョーが勇気だして謝りに行くんやったら、ママもお薬飲んで、頑張ってついていくわ!あのお店は、行ったことないから、ちょっとママも怖いなぁ〜。でも、オジョーのためやったら、ママも勇気出す!やから、オジョーも勇気だそ?頑張ろ!」 

      オジョーの背に手をまわし、ぎゅっと抱きしめ、背中を擦りながら、何度も何度も、

      「勇気だそ!強い心になろう!」

      と言い続けた。
       それでも、決心がつかないのか不安なのか、無言のままのオジョー。

       「どしたん?お店に行くの怖いん?」 

       「ちがう。」 

       「それじゃぁ、なんやろ?もしかしたら警察さん呼ばれるかもって思ってるん?」 

      「・・・うん。警察さんに連れて行かれるか思う・・・。」 

      「そっかぁ。警察さん呼ばれたらイヤやな。でも、オジョーは、お菓子持ってお店の外に出たわけじゃないから、きっとお店の人は、警察さん呼ばんと思うで?それに、ママがちゃんとついてって、一緒に謝ったるから、大丈夫やて。心配せんでいい。オジョーを警察さんになんか、絶対渡さへんで!!そんなん、ママもパパもイヤや!」 

       しばらく無言の時が流れた。

       「勇気だすのにも、心の準備いるよな!オジョーが、よし!謝りに行こう!って思えるようになったら、ママに言いにきてくれる?」

       と、少しオジョー自身に独りで考える時間を与えようと、母はキッチンに移動した。
      5、6分くらい経っただろうか、オジョーがキッチンに来て言った。 

      「ママ、オジョーお店の人に謝りに行く!やから、ママ、お薬飲んで。」

      さっきまでの不安そうな顔つきはもうなく、何かと決別したように、キリッとした表情になっていた。

       「わかった!ちょっとまって。ママ、薬飲むわ!」

       と、すぐさまオジョーの前で薬を飲み、5分ほどして、一緒にスーパーへと向かった。
       時刻は既に夜の11時を回っており、たぶんもうお店は閉まってるだろうな、と思ったが、暗い道、2人で自転車を飛ばした。 

      スーパーの前に着いた。
       案の定、店は閉まっており、裏に回ってみたら、2階の事務所らしき部屋に灯りがついていた。
      シャッターの横にドアがあり、壁にインターホンが付いていた。 

      薬を飲んでいたとはいえ、やはりまだ慣れないのか、母の体は震えていた。 
      オジョーが、「ママ?大丈夫?」と、その震える手をギュッと握りしめてくれた。

       「大丈夫、大丈夫!!上の灯りがついてるから、誰かおるかもしれへんな。」 

      何度も何度も鳴らしたが、誰もでてこず。ドアをドンドン叩いてみたりもした。
       オジョーも、建物の横から上を見上げたり、正面玄関にまわったりして、 

      「電気点いてるのに、おかしいなぁ。」 

      と、オジョーもドアをノックした。それでも、誰も出てこなかった。
      (実のところ、誰も出てこないとわかって、母は、少しだけ不安感から解放された。) 

      「なぁ、オジョー、電気は点いてるけど、誰もおらんみたいやな。せっかくきたのに、残念やけど、とりあえず、お店に謝っとこうか!」 

      と、オジョーに謝らせた。
       が、か細い声で「ごぇんなさい・・」と、体もクネクネしている。

       「オジョー、人に謝るときは、そんな謝り方じゃ、気持ちが伝わらへんで!手はこう!足はこう!背中から頭までピンとして、深くおじぎして、おっきな声ではっきりと『ごめんなさい!!』って言うんや!そんな、ダラダラしとったらあかん。シャキーンとせな!オジョーがお友達と喧嘩して、謝って欲しいとき、そんな態度で謝られたら、オジョーはどんな気分?」 

       「あんま、いい気持ちせぇへん。」

       「そやろ?ママがお手本見したるから、よー見とき!」

       と、夜とはいえ、沿道には人が行きかっている中、

       「今日は、うちの娘が悪いことして、本当にすみませんでしたっ!!二度とこのような事がないよう、親も注意しますっ!!すみませんでしたっっ!!!」 

      と大きな声で、店に向かって深々と頭を下げた。

      次はオジョーの番。 
      足を揃えて、手を前に合わせて、背中もシャキーン。 
      ちょっと声は小さめだったけど、ちゃんとはっきりと

       「ごめんなさいっっ!!」

       言えました。 

       家路に帰る道すがら、オジョーの顔を見ると、なんだかルンルン気味。

       「オジョー、ちゃんと上手に謝れたやん!立派やったで。“ついやっちゃうかもな”って気持ち無くなった?」

       「うん!」 

       「お店の人、おらんかったから、ちょっと安心したやろ(笑)?」

       「うん!!」 

       なるほど、それでちょっとルンルン気分なんやな(苦笑)

       「でも、お店の人には謝れへんかったなぁ〜。オジョー、今どんな気分?スッキリした?」 

      「うーん、お店の人いなかったから、よかったって思ったけど、でも・・・スッキリはぁ・・・ちょっとしない。」

       「ふーん。じゃあ、家に帰ったらパパにもちゃんと謝って、今度お店の人がいるときにパパに連れてってもらってさ、きちんと謝ってきたら?そしたらケジメもつくんちゃう?」 

       「ケジメって何?」 

      「ケジメってのは、自分のしたことに、最後まで責任を持つってこと。そこまでできたら、今回のことも、これからの“ついやっちゃうかも”も、ちゃんとケジメがつくんちゃうかなぁ〜。」

       「オジョー、今度パパに連れて行ってもらって、お店の人にちゃんと謝る!!そして、絶対、泥棒さんにならんようにすんねん!そしたら、パパ、許してくれるかな?」

       「そやね〜、きちんと心から謝ったら、パパも許してくれるんちゃう?せっかくの誕生日やもんなぁ。気持ちよくパーティしたいもんな!自転車も欲しいやろ?オジョーがちゃんと謝れたら、ママからもお話してみるわ。」 

      「うん!!えっとぉ、保育園ある日はお店いけへんけど、土曜日は行くやろ?やから、パパに土曜日に連れてってって頼むねん!!」

       正直なところ、実際に品物を持ち帰った訳でもなく、一応、お店まで行って謝ったので、これでいいかと母は思っていた。でも、オジョーの口から、『もう一度、ちゃんとお店の人に謝りに行く』という言葉が出てきたので、それなら、最後まできちんとケジメをつけさせようと思った。

       「そやな!それが出来たら完璧やな!!」

       家に戻り、オジョーは、まず父に謝った。

       「わかった。オジョーが本当に反省してるなら、土曜日に一緒に行こう。パーティと自転車は、それから考える。」 

      とりあえず、一段落。 

      その後、日にちが迫ってくると、しきりにカレンダーを見るようになったオジョー。 
      いざ決戦!!の日の前夜、

       「土曜日って、明日やんな?ママ、オジョーなんかちょっと・・・人がいっぱいいるとこで謝るの、恥ずかしいなぁ・・・」 

       と言ってきた。

       「そやな、恥ずかしいな〜。でも、お店で人がいっぱい買い物してる中で、オジョーはポケットにいれたんやろ?そんだけ恥ずかしいって思うくらい、オジョーは悪いことしたってことや。それに、スーパーやし、人はおるやろ。そら、しゃーないわ。でもさ!ま、ちょっとお店の人に頼んでさ、人が少ないところに呼び出して謝ったらどう?」

       「トイレとか?」

       「トイレ〜!?それはちょっとあかんやろ〜(笑)。そんな、くっさいとこで、お店の人も謝られたくないで〜。」 

      (トイレなんて、いつの時代の呼び出しだ!!)

      2人でケラケラと笑った。
      それから、母からの提案。

       「じゃぁ・・・レジの人じゃなくて、売り場の人を人が少ないところに呼んで、ごめんなさいしたら?」

       「うん!」 

      やっぱり行くのイヤやとか、怖いとか言うのではなく、6歳になりたてホヤホヤの頭の中では、ちゃんとケジメをつけようと、オジョーは自分自身としっかり向き合っていた。

      いざ決戦の日は、生憎の雨。 
      明日でもいいかな・・・と母は思った。 
      でも、オジョーは保育園から帰ってくるなり、キリッとした顔で、こう言った。 

       「パパ、自転車では行けへんから、車で行こ!」

       約束通り、きちんと謝りに出かけた。

       帰ってきて、「どうだった?」と父に聞くと、『パパは離れてて』と言われ、オジョー独りでお店の人と話したらしい。 

      オジョーに聞くと、「ママ、ちょっとこっち来て♪」と手招き。
       母の耳元でひそひそ声で嬉しそうに話してくれた。

       「もう、しないでネ!って言われた!警察さん呼ばへんって言われた♪ これで、オジョー、もう“つい”やったりせぇへんで!」 

       晴れ晴れとした表情。
       またひとつ、成長したなと思わせる瞬間だった。 

      その夜、1日遅れではあるが、家族でささやかながら、楽しいパーティをした。
      もちろん、自転車もゲット!! 

      その自転車は、澄みきった空を思わせる爽やかなスカイブルーの色だった。





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